店舗構築日記 1[事の顛末]

私は生きるという事が苦手です。


何度引越しても隣近所とうまく行ったためしがありません。

大抵それが理由の中の大きな要素となってまた引っ越す事になってしまう事が過去何度かあったのです。今までに18回も引越しをしたのも全部がそのせいではないけれど、少なくともこの前のと今のは明らかにそのせいです。


今回は隣に住んでいる大家のお婆さんが「親戚を住まわせるので出て行って頂戴」と突然宣ったのがコトの始まりでした。

勿論そんな無体なと断ろうとすると事実無根な罵詈雑言を浴びせられました。それまでの苦い経験から自分としては精一杯努力していたつもりだったのですがそれがなにひとつ意味を為さずそれ以上に怒りをかっていた事に大変なショックを受けて心身ともに落ち込んでしまったのです。 


それで個展やら骨董市やらの間隙を縫って新しい家探しが始まりました。



この家をやっとネットで見つけたのですが、写真など一切なくて家の図面しか掲載されていません。

見に行くにしてもアクアラインに乗って更にまだその先になります。元々千葉県はあまり縁がなくてこれ迄は成田に行く途中にある平野というイメージしかありませんでした。高速代だけでも片道三千五百円、近隣の状況を調べてみても最寄りのコンビニが4キロ先だとか最寄り駅が有形文化財で2.9キロ離れてるとか、不安になる材料しかありません。

まあそれでも家賃が安いしそれに充分に広い。道具屋としても美術作家としても申し分のない物件です。もう一軒の候補は現在の住居から30分程度で広さもそこそこあるのだけど庭がありません。


でも、この千葉の物件、問い合わせメールに一切返信がない、それで片付けと商品整理に来てもらっていた三吉さんにお問い合わせ電話をしてもらったのですがあまり要領を得ません。

それならもう見に行こう!という事で次の日だったか一緒に行ったのですが現場はどこからどうみても間違いなく立派な廃墟でした。


あちこち雨漏りしていて天井や床が何箇所も抜けていて、三十畳の大広間には企業ゴミみたいなのがヤマモリです。ハクビシンも大家族でお住まいになっていたらしくあちこちに彼等のフンがヤマになっています。ずっと閉めっぱなしだったようで、カビ臭く迂闊に深呼吸などしたらそのまま喘息とかになりそうです。


借りれば今回から正式に古道具屋修行に入る三吉さんと共同で使う事になるので彼女の意思や意見も尊重せねばなりません。大家さん兼不動産屋さんのお爺さんもこんな状態だから好きにしていいよ、猫だって虎だって、なんでも飼っていいよ、と言ってくれたのでそれならいいかなと。三吉さんも改装し放題という所でやる気になっていてそれなら前向きに検討しますと言う事で一旦引き上げました。

それは、もう一軒現在の住居に近い物件を内見をお願いしていたからで、辺境の海に近いその物件も周囲の様子や風景がとても素敵だったのです。ですが、そちらはバタバタしているうちに借り手がついてしまいました。

それならこれはなるべくしてなったのだと考えすぐに契約を済ませ、まずは修理と片付けからという事になったのです。


でもそこからがこの冒険の旅の始まりになったのでした。



続く

古道具屋アウトローブラザーズ

0コメント

  • 1000 / 1000